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熊本地方裁判所 平成9年(行ウ)4号 判決 1999年3月15日

熊本市新土河原一丁目一四番三四号

原告

有限会社清永和工務店

右代表者代表取締役

清永和宏

右訴訟代理人弁護士

迫邦夫

原田信輔

熊本市二の丸一番四号

被告

熊本西税務署長 佐藤芳雄

右指定代理人

細川二朗

和田範明

武田節夫

前田利幸

谷田智昭

境野義孝

井寺洪太

今村久幸

田川博

鈴木吉夫

福浦大丈夫

右当事者間の頭書事件について、当裁判所は、平成一〇年一二月二五日に終結した口頭弁論に基づき、次のとおり判決する。

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が原告に対して平成七年三月二四日付けでした平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度(以下「平成二年三月期」という。)以後の青色申告の承認の取消処分を取り消す。

二  被告が原告に対してした次の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。

1  平成七年三月二八日付けでした

(一) 平成二年三月期の法人税に係る更正処分のうち、所得金額二七八万五〇三〇円、納付すべき法人税額八〇万七六〇〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分のうち、重加算税額一二万九五〇〇円を超える部分

(二) 平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度(以下「平成三年三月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち、所得金額△一五五万八五二八円(△はマイナスを示す。以下同じ)、納付すべき法人税額△五三二〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)

(三) 平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度(以下「平成四年三月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち、所得金額△四四二万七四八三円、納付すべき法人税額△九〇四〇円を準える部分及び重加算税の賦課決定処分

(四) 平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度(以下「平成五年三月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち、所得金額〇円、納付すべき法人税額一〇六六円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

(五) 平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度(以下「平成六年三月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち、所得金額二五〇万六一七三円、納付すべき法人税額六九万九七〇〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)

2  平成七年一二月二六日付けでした平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの事業年度(以下「平成七年三月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち、所得金額一五二万二五三五円、納付すべき法人税額四一万五九〇〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

三  被告が原告に対してした次の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。

1  平成七年三月二八日付けでした

(一) 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの課税期間の消費税に係る更正処分のうち、課税標準額五八四八万五〇〇〇円、納付すべき消費税額△九万八一七〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

(二) 平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの課税期間の消費税に係る更正処分のうち、課税標準額一億一八八一万八〇〇〇円、納付すべき消費税額△八一万八一一七円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)

(三) 平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの課税期間の消費税に係る更正処分のうち、課税標準額一億〇六八五万四〇〇〇円、納付すべき消費税額八三万四二〇〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

(四) 平成四年四月一日から平成五年三月三一までの課税期間消費税に係る更正処分のうち、課税標準額六九六六万九〇〇〇円、納付すべき消費税額二八万四二〇〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

(五) 平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの課税期間の消費税に係る更正処分のうち、課税標準額一億二六五三万円、納付すべき消費税額一〇五万七一〇〇円を超える部分(ただし、いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)及び重加算税の賦課決定処分

2  平成七年一二月二六日付けでした平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの課税期間の消費税に係る更正処分のうち、課税標準額一億〇五七一万七〇〇〇円、納付すべき消費税額六七万九九〇〇円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分

四  被告が原告に対してした次の納税告知処分及び賦課決定処分をいずれも取り消す。

1  平成七年三月二八日付けでした次の各期間の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分(ただし、(一)から(四)及び(八)の各期間の処分については、それぞれ裁決によって一部取り消された後のもの)

(一) 平成二年一月から同年六月までの期間

(二) 同年七月から同年一二月までの期間

(三) 平成三年一月から同年六月までの期間

(四) 同年七月から同年一二月までの期間

(五) 平成四年一月から同年六月までの期間

(六) 同年七月から同年一二月までの期間

(七) 平成五年一月から同年六月までの期間

(八) 同年七月から同年一二月までの期間

(九) 平成六年一月から同年六月までの期間

2  平成七年一月二六日付けでした平成六年一月から同年六月まで及び同年七月から同年一二月までの各期間の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも裁決によって一部取り消された後のもの)

第二事案の概要

一  本件事案の要旨

本件は、株式会社鶴屋百貨店ハウジング部(以下「鶴屋」という。)の下請工事業者である原告が、鶴屋の嘱託社員と通謀し、真実は工事をしていないのに工事費名目で鶴屋に請求して支払わせた小切手又は約束手形に関して、原告の所得となるにもかかわらず、原告はこれを隠ぺいして原告代表者に費消させたとして、被告が原告の青色申告承認取消処分、法人税・消費税に係る更正処分・重加算税の賦課決定処分及び源泉徴収に係る所得税の納税告知処分・不納付加算税の賦課決定処分(以下「本件各処分」という。)をしたのに対し、原告は、右小切手又は約束手形による支払は原告代表者から右嘱託社員に対してした貸金の返済及び利息であって原告代表者個人に帰属するもので原告には帰属しない等として異議申立てをしたが棄却され、審査請求によっても一部の取消ししかなされなかったのを不服として右各処分の取消しを求めた事案である。

二  争いがない事実及び証拠(括弧内に掲記)により容易に認められる事実

1  原告(代表者清永和宏(以下「清永」という。))は、本件各処分当時、熊本市内において、建築設計、建築工事業を営む同族会社で、鶴屋の下請業者をしており、田上隆(以下「田上」という。)は、建築工事のあっせん及び管理を業とする有限会社豊建装の取締役であり、鶴屋の嘱託社員であった。

2  清永は、昭和四八年ころから個人で建築工事業を始め、同五三年ころ、善徳丸建材株式会社(以下「善徳丸建材」という。)に勤務していた田上と知り合った。昭和五九年、清永は、原告を設立し、その代表者となったが、このころ、田上は善徳丸建材を退職し、鶴屋の嘱託社員となった。(甲九の1、証人田上、原告代表者)

3  昭和六〇年ころ、原告は、田上の紹介により鶴屋の下請工事をするようになるとともに、このころから平成六年ころまで多数回にわたり、原告が鶴屋に対して架空工事に係る請求をし、事情を知らない鶴屋がこれに応じて手形又は小切手で支払をした(以下「鶴屋支払分」という。)が、鶴屋に対する請求は原告の請求書で行われ、鶴屋支払分に対しては原告の領収書が鶴屋に提出された(原告が架空工事であるのに、鶴屋に対し、工事代金名目で原告の請求書、領収証を発行したことは争いがない。)。

鶴屋支払分は、結果としてその約二割が清永にわたり(以下「清永取得分」という。)、残額は田上が受領した(以下「田上取得分」という。)。清永は、清永取得分を同人名義で預金したり個人的に費消したりした(甲九の1、乙八七、原告代表者)。

原告は、架空工事に係る請求及び領収については原告の備付帳簿に記載しなかった。

4  原告の架空請求に関連する納税申告、本件各処分、それに対する異議申立て、審査請求等の経過は別表「課税の経緯表」のとおりである。

5  鶴屋支払分は別表1の<1>欄記載のとおりであり、こうち平成元年八月一〇日支払分の一部である四万一二〇〇円以外は、架空工事に係るものである。

三  被告の主張

1  所得の帰属について

(一) 架空工事に係る請求は、鶴屋の嘱託社員である田上が大手総合建設会社(以下「ゼネコン」という。)等からの受注を確保するために使う資金を確保するためであった。すなわち、田上の資金捻出のために原告の名で鶴屋の下請工事代名下に請求書を出して鶴屋にその支払をさせ、領収書も原告名義で作成し、原告と鶴屋という法人間の取引形態をとって鶴屋支払分のうち一定割合を田上取得分とし、その残額を清永取得分としたのである。

したがって、清永取得分は、田上が金員を捻出するために原告から名義を借りたことに対する対価であって、謝礼としての手数料という性格を有するものであるから、原告に帰属する所得である。

なお、原告の申告所得金額に加算すべき金額は、原告の取得した別表1の<1>欄記載の金額(鶴屋支払分)から、同<5>欄記載の田上取得分を控除した上、同<4>、<8>欄記載の経費を控除した同<10>欄記載の額である。

(二) 原告は、清永取得分が田上に貸していた金の返済及び利息分であると主張するが、<1>田上に貸し付ける動機や資金調達方法について合理性がなく、客観的証拠もないこと、<2>架空工事に係る取引内容を定めたのは田上であって、原告はこれに従って工事代金の請求及び領収をしており、鶴屋支払分のうち、清永取得分は一定の割合に決まっていたが、その割合は田上が、原告と鶴屋との間に行われる正規工事の場合を参照して定めたことから、清永と田上の個人的貸借というには、その客観的基盤を欠いていること、<3>原告主張によれば、原告が田上に貸付をする際、多額の貸金になるにもかかわらず借用書を作らず、担保も領収書もなく、返済期も定めず、借入期間の長短に関係なく常に二割を超える利息をとっていたことになるが、そのようなことは常識的にみてあり得ないこと、<4>清永は、清永取得分について所得税の申告をしていないこと、から採用できない。

2  法人税の青色申告承認取消処分の適法性について

原告は、平成二年三月期において合計四一八万五六七二円を取得しているのに、この事実を備付帳簿書類に全く記載していないから、法人税法一二七条一項三号に該当し、当該事業年度にさかのぼって被告がした法人税の青色申告承認取消処分は適法である。

3  法人税の更正及び重加算税賦課処分の適法性について

(一) 清永取得分は、手数料として原告に帰属すべきものであるから、被告が右金員を所得金額に算入した法人税の更正処分は適法である。

(二) 原告代表者である清永は、原告が手数料として取得した金員を、清永個人名義の預貯金口座に預け入れたり個人的に費消したりして、原告の備付帳簿書類に記帳せずに除外しており、このことは、国税通則法六八条一項にいう「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し」た行為に当たる。

したがって、被告がこれらの事実に係る部分の税額を計算の基礎としてした法人税の重加算税賦課決定はいずれも適法である。

4  消費税の更正及び重加算税賦課処分の適法性について

(一) 前記のとおり、清永取得分は原告に対する手数料であり、消費税の課税対象となるものであるから、これを課税標準として被告がした消費税の更正処分は適法である。

(二) 法人税と消費税の税額計算の基礎となる事実(手数料の発生)は同一であるから、被告がした消費税の重加算税賦課決定は適法である。

5  源泉徴収に係る所得税の納税告知等の適法性について

(一) 原告代表者清永は、原告が取得した手数料を個人的に蓄財又は費消していたのであるから、原告は、清永に対し、同人が蓄財又は費消した金員に相当する額を役員賞与として臨時に支給していたというべきである。

(二) したがって、右役員賞与は、法人税法三五条四項にいう賞与に当たるものであるから、被告が所得税法一八六条により計算した源泉徴収による所得税額について、国税通則法三六条一項二号に基づいてした納税告知処分と、右税額を法定納期限までに納付しなかったことについて、同法六七条一項に基づいてした不納付加算税賦課決定処分は、いずれも適法である。

四  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  認否

平成元年八月一〇日に支払われた分のうち四万一二〇〇円が正規の工事分であって原告に帰属することは認めるが、その余の清永取得分が原告の所得であることは否認し、法的主張は争う。

2  反論

(一) 昭和五九年ころ、田上が善徳丸建材を退職する際、清永は、田上に対して貸金や個人的な工事代金など約一五〇万円の債権を有していた。田上がさらに借金を申し込むので清永は乗り気ではなかったが、昭和六〇年になってから五〇万円を貸し付けた。その後一か月ほどして清永が田上に返済日を尋ねると、田上は原告から鶴屋宛てに請求書を出してくれれば、鶴屋から手形、小切手の支払があるので、それを借金の返済に充ててくれと言われ、清永はこれを承諾した。

その後も同様の貸付が継続して行われるようになった。貸付日時は今となっては不明である。返済日から逆算すると、その一か月程度前に貸し付けられ、利息は二割であることが多かった。

右のような貸付は、田上に対してだけではなく、鶴屋の部長である津留に対しても行ったことがある。

(二) したがって、鶴屋支払分は、すべて、清永個人に対する貸金の返済及び利息のま支払であって、その詳細は別紙明細書のとおりであり、それは清永個人に帰属するものであるから、原告に帰属することを前提にした被告の本件各処分は違法である。

(三) 請求書や領収書が原告名義であることは、架空工事代金請求によって貸金を回収していただけのことであり、原告に所得が帰属する理由にはならない。また、現金を先に渡してその後に架空の請求書を出したことも多かったのであるから、これは何の保証もなしに金を渡したことに変わりはないので、借用書等がないことは原告主張に対する批判とはならない。

第三当裁判所の判断

一  前記争いのない事実、証拠により容易に認められる事実に証拠(甲八、乙三から八三、八五、証人田上、証人上島康宏)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

1  田上の鶴屋における職務は、ゼネコンから受注を受けること及び下請先を決めて施工管理をして業者から送られる請求書により鶴屋からの支払を行うことであった。田上は、鶴屋では一年契約の嘱託社員であったため、次の年度にも鶴屋との契約を続けるためには売り上げを落とさないようにすることが必要であり、そのためにゼネコンからの受注活動をする資金が必要だった。

2  そこで、田上は鶴屋から受注した工事について、鶴屋としては三、四パーセントの利益が確保されればよく、後の下請先の選定や工事代金額の決定について田上に任せていたことから、より利益が上がる工事については、その利益分を架空工事をしたことにして、経費を増やし、自らの活動資金をつくることにした。田上は、以前からの知り合いの原告代表者である清永に対し、架空工事による請求を依頼した。架空工事による請求をするに際しては、その工事内容及び代金額(鶴屋支払分)は田上が決めていた。

3  また、鶴屋支払分を田上取得分と清永取得分に配分する比率も、田上が決めていた。その際の判断基準は、原告が正規工事をした場合に原告に生ずる利益であった。すなわち、鶴屋支払分のうち、架空工事代金から消費税相当額を控除した残額の約七〇パーセントから約八〇パーセントを田上が取得し、その余が清永取得分となった。このように約七〇パーセントから約八〇パーセントと開きがある原因は、主として代金の一部が手形で支払われた際の手形割引等を考慮した結果である。手形による支払分が多い場合は田上取得分が減り、清永取得分が増えた。架空請求が行われていた五年間を平均すると約七八パーセントが田上取得分とされ、その余が清永取得分とされた。

4  田上取得分を最大に見積ると、鶴屋支払分から消費税分を控除(手形割引がなされたときはさらに割引料を控除)した残額の八〇パーセントとなる。これは清永取得分を最低に見積った場合である。

右の場合の平成二年八月二二日分以外の田上取得分は別表1の<5>欄記載のとおりであり、清永取得分は同<6>欄記載のとおりである。平成二年八月二二日分は、別表1の「平成3年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等」中の同日欄に内一三六万円の手形による支払に対する割引料である六万〇八〇八円が脱落しているので、田上取得分は二〇二万円、清永取得分は六五万八〇〇〇円である。

5  鶴屋支払分のうち、手形で支払われた分に関する手形割引の割引料等については別紙確認書に記載のとおりである。

6  なお、原告は、平成元年八月一〇日に支払われた分のうちの四万一二〇〇円は正親の工事であると主張するが、そうであれば、それは即原告に帰属することになり、本件の青色申告承認取消処分以外の各処分には全く影響はないことになる。もっとも、原告の右主張は、原告代表者が尋問で架空工事であることを認めていることから採用の限りでない(なお、原告代表者は、乙七の5、乙六の4(一部)の工事について正規工事であると陳述しているが、原告はそれに副う主張をしていないし、それを認めるに足りる的確な証拠はない。)。

二  判断

1  所得の帰属について

(一) 田上は、鶴屋における一年契約の嘱託社員であったため、その契約を次年度も維持しようとして実績をあげることを迫られ、ゼネコンからの受注活動をするための資金を必要とし、鶴屋に対して原告と架空工事による請求をするようになった。これを行うためには、田上にとって原告の協力が必須となっている。すなわち、架空請求をするためには、鶴屋の下請業者の協力が不可欠であり、そのために田上は原告に架空請求の依頼をし、鶴屋支払分から田上取得分を得て、その残りを清永取得分として原告に渡したのである。

そして、実際に行われた架空請求の方法をみても、原告がその請求書を鶴屋に渡し、原告が手形小切手を受領し、原告の領収書を鶴屋に提出している。

(二) したがって、田上のゼネコン受注活動費捻出のためには鶴屋の下請業者である原告の存在が必要不可欠であり、清永取得分は、原告の架空請求という役務提供に対する手数料という実質を有しているのであるから、原告に帰属すると考えるべきである。

(三) これに対して、原告は清永取得分が清永から田上に対する貸金の返済及び利息であると主張する。

原告主張及び原告代表者の陳述によれば、昭和五九年当時、清永は田上に対して一五〇万円くらいの貸金があり、その返済を受けていないので、このころ、田上から借金を申し込まれたが、これに応じたくない気持ちであったこと、それにもかかわらず昭和六〇年になって再度田上から借金を申し込まれたとき、従前の貸金返済を迫ることもせず、その使途について詳しく聞くこともなく、親戚から借金をしてまで田上に五〇万円を貸したことになる。しかし、これに反する田上証言もあり、原告代表者の陳述する昭和六〇年に田上へ貸金をした経緯は、通常の金銭の貸借と比較するとはなはだ不自然である。しかも、原告主張によれば、昭和六〇年以降多数回に及んで多額の金を貸し付けるに際し、その利息は、借り主であるにもかかわらず田上自身が決めたこと、その内容も貸付期間の長短にかかわらず約二割と一定であったこと、貸付期間の多くは約一か月であったので月利約二割の利息をとっていたこととなり、到底信じられない内容である。

そうすると、原告主張に副う原告代表者の陳述を採用することはできず、田上以外にも鶴屋の社員に金を貸したことがあるという原告代表者の陳述が仮に真実であったところで右(二)の認定を左右するに足りないし、他にこれを左右するに足る証拠もないから原告主張は理由がない。

2  法人税の青色申告承認取消処分の適法性について

(一) 原告は、架空工事に係る請求及び領収については、原告の備付帳簿に記載していなかったが、右1で判断したように清永取得分は原告に帰属するから、平成二年三月期においても本来原告の備付帳簿書類に記載すべきであったものである。

(三) したがって、原告には平成二年三月期において、法人税法一二七条一項三号にいう「その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し、その他その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること」に該当する事実があったので、右事実を具体的に掲記した平成二年三月期にさかのぼって被告がした法人税の青色申告承認取消処分は適法である。

3  法人税の更正及び重加算税賦課処分の適法性について

(一) 前記1(二)のとおり清永取得分は原告に帰属すべきものであるから、鶴屋支払分があった度に原告が備付帳簿書類に記載していないものの、本来申告所得金額に加算すべき金額は、清永取得分から経費である手形割引料及び取得金額増加に係る事業税増加分を控除した額となる。

鶴屋支払分がああった度の清永取得分の額は、平成二年八月二二日以外は、別表1の<6>欄記載の額を下回っていない。また、平成二年八月二二日は、別表1に手形割引料六万〇八〇八円が脱落しているので同表の<6>欄の同日欄は五九万七一九二円となるはずであって、八〇八円減額されるべきであるが、同表では田上取得分を常に最大限とした計算がなされており、手形割引があった場合は、同欄の八〇パーセントを、多くとも七八パーセントとみるべきであるから、これによると、結果的に同日の原告の所得金額も同表の<6>欄記載の額を下回らないことになる。

そうすると、平成二年三月期から平成七年三月期までに原告が備付帳簿書類に記載していない各期ごとの所得額は別表1の<6>欄の各期の合計欄記載の額を下回らず、その結果、被告認定額(裁決で一部取り消されたものはその後のもの・別表1の<9>の各期ごとの合計欄記載のもの)を下回っていないことになるから、右金額(ただし、平成三年三月期から平成七年三月期までは、さらに別表1の<8>欄記載の事業税増加分を控除)を原告の申告所得額に加算して被告のした法人税の更正処分(裁決で一部取り消されたものはその後のもの)はいずれも適法である。

(二) 原告代表者である清永は、原告が手数料として取得した清永取得分を、清永個人名義の預貯金口座に預け入れたり個人的に費消したりして、原告の備付帳簿書類に記帳せずに除外しており、このことは、国税通則法六八条一項にいう「課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出し」た行為に当たるので、被告のした法人税の重加算税賦課決定はいずれも適法である。

4  消費税の更正及び重加算税賦課処分の適法性について

(一) 右1(二)のとおり、清永取得分は、原告の役務の提供に係る手数料であり、消費税の課税対象となる(消費税法二八条一項、二条一項八、九号)から、これを課税標準として被告のした消費税の更正処分はいずれも適法である。

(二) 法人税と消費税の税額計算の基礎となる事実(手数料の発生)は同一であるから、右3(二)と同様に被告のした消費税の重加算税賦課決定はいずれも適法である。

5  源泉徴収に係る所得税の納税告知等の適法性について

(一) 原告代表者清永は、原告が取得した手数料を個人的に蓄財又は費消していたのであるから、原告は、清永に対し、同人が蓄財又は費消した金員に相当する額を役員賞与として臨時に支給していたというべきである。

(二) したがって、右役員賞与は、法人税法三五条四項にいう賞与に当たるから、被告が所得税法一八六条一項により計算した源泉徴収すべき所得税額について、国税通則法三六条一項二号に基づいてした納税告知処分と、右税額を法定納期限までに納付しなかったことについて、同法六七条一項に基づいて被告がした不納付加算税の賦課決定処分はいずれも適法である。

第四結論

以上のとおりであるから、原告の請求は、いずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 有吉一郎 裁判官 小田幸生 裁判官 金田洋一)

別表

課税の経緯表

一 法人税

(一) 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度以後の法人税の青色申告

<省略>

(二) 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度

<省略>

(三) 平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの事業年度

<省略>

(四) 平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの事業年度

<省略>

(五) 平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの事業年度

<省略>

(六) 平成四年四月一日から平成六年三月三一日までの事業年度

<省略>

(七) 平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの事業年度

<省略>

二 消費税

(一) 平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの課税期間

<省略>

(二) 平成二年四月一日から平成三年三月三一日までの課税期間

<省略>

(三) 平成三年四月一日から平成四年三月三一日までの課税期間

<省略>

(四) 平成四年四月一日から平成五年三月三一日までの課税期間

<省略>

(五) 平成五年四月一日から平成六年三月三一日までの課税期間

<省略>

(六) 平成六年四月一日から平成七年三月三一日までの課税期間

<省略>

三 源泉徴収に係る所得税

(一) 平成二年一月から平成二年六月までの期間

<省略>

(二) 平成二年七月から平成二年一二月までの期間

<省略>

(三) 平成三年一月から平成三年六月までの期間

<省略>

(四) 平成三年七月から平成三年一二月までの期間

<省略>

(五) 平成四年一月から平成四年六月までの期間

<省略>

(六) 平成四年七月から平成四年一二月までの期間

<省略>

(七) 平成五年一月から平成五年六月までの期間

<省略>

(八) 平成五年七月から平成五年一二月までの期間

<省略>

(九) 平成六年一月から平成六年六月までの期間

<省略>

(一〇) 平成六年七月から平成六年一二月までの期間

<省略>

別表1

○ 平成2年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等

<省略>

○ 平成3年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等

<省略>

○ 平成4年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等

<省略>

○ 平成5年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等

<省略>

○ 平成6年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等

<省略>

○ 平成7年3月期の申告所得金額に加算すべき金額等

<省略>

○ 役員賞与となる金額

<省略>

○ 役員賞与となる金額

<省略>

○ 役員賞与となる金額

<省略>

明細書

<省略>

<省略>

<省略>

別紙

確認書

平成元年4月1日から平成7年3月31日までの間の持参人 熊本市新土河原1丁目14-34 有限会社清永和工務店に対する、振出人 株式会社鶴屋百貨店の手形についての手形割引料は、下記のとおりであることに相違ありません。

<省略>

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